身近なところに潜む寄生虫。
しっかり対策して愛犬の健康を守りたいですね。
ノミの生態と病気について
世界には2,000種以上いるといわれているノミ。
犬や猫、人に寄生するほとんどが
ネコノミとされています。体長は1~2mm程度。
自分の体長の約100倍~150倍もの高さまで
跳ね上がるジャンプ力を持ち、地面や植物などから
動物の体に飛びついて寄生します。
ノミの生息場所
ノミは日の当たらない、暗くてジメジメした場所に多く生息しています。また、暖かい場所を好むため屋外よりも室内での繁殖活動が盛んです。いつのまにか動物や人にくっついて家の中に侵入し、繁殖してしまうこともあります。
驚きの繁殖力
ノミは驚きの繁殖力を持ち、見えないところにたくさん潜んでいます。ノミの成虫が1匹いたとすると、さなぎは2匹、幼虫は7匹、卵はなんと10個! 動物に寄生したノミの成虫は、最長で120日ほど生き続けることができ、その間、吸血と産卵(1日当たり20~50個)を繰り返します。
ノミによる主な病気と症状
ノミは犬にかゆみを引き起こすほか、貧血や皮膚炎の原因となることも。
また、ノミは人にも寄生し、その部位に皮膚炎を起こすこともあります。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液に含まれる成分に対してアレルギー反応を起こし、かゆみや炎症が広範囲にみられます。
瓜実条虫症
ノミが媒介する消化管内寄生虫。グルーミングなどによりノミを口から取り込むことで、瓜実条虫が小腸に寄生。下痢や嘔吐、食欲不振、肛門周辺のかゆみなどを引き起こします。
ノミ刺咬症
ノミに咬まれた刺激と、唾液に含まれる成分に対するアレルギー反応により、強いかゆみが生じる病気です。皮膚には紅斑や丘斑ができ、その中心には刺咬による出血斑がみられます。
マダニの生態と病気について
マダニは肉眼でわかるほどの大型のダニで、
野外に生息し、吸血のため動物に寄生し、
さまざまな病原体を運ぶことがあります。
マダニ
体長は未吸血の成ダニで3〜8mm。吸血すると10〜20mm程度に膨れ上がります。頭部を皮膚に食い込ませながら咬みつきます。
マダニは一度吸血を始めると皮膚から取り除くことは困難です。
また、マダニは人にも危険な病原体を媒介することがあるため、犬についているマダニを見つけたら動物病院に相談してください。
マダニの生息場所
マダニは草むらの中に身を潜め、葉の裏や茎の先などで宿主となる動物を待ち構えています。
緑があればどこにでもいるマダニ。散歩や旅行に出かけるときには注意が必要です。
すさまじい繁殖力
マダニはさまざまな環境で繁殖することができ、繁殖条件が揃っていると、1か月で2000~3000個もの卵を産むといわれています。
マダニによる主な病気と症状
多くの病原体を媒介するマダニ。吸血による貧血や皮膚炎だけでなく、命にかかわる病気になる恐れもあります。
また、人にも被害が及ぶ病気もあります。
重症熱性血小板減少症候群
(SFTS)
SFTSウイルスを持ったマダニに吸血されることで感染する病気です。犬は一般的に無症状ですが、まれに発熱や食欲消失、白血球減少症、血小板減少などがみられます。人は発熱、倦怠感、食欲低下、消化器症状、リンパ節腫脹、出血(血小板減少)などがみられ、死亡例も報告されています。
ライム病
マダニによって媒介されるボレリア菌が引き起こす病気です。犬はまれに元気消失、食欲不振、跛行、発熱がみられます。人は刺咬部を中心とした特徴的な遊走性紅斑(徐々に広がる紅斑)、発熱、リンパ節腫脹、関節痛、慢性萎縮性肢端皮膚炎や慢性関節炎などの症状がみられます。
日本紅斑熱
1984年に徳島県で初めて確認された病気で、主に関東よりも西の地域にみられます。動物や人間の細胞内で増殖する細菌、リケッチアの一種である紅斑熱群リケッチアによって引き起こされます。主に人が感染し、39〜40度の高熱、頭痛、寒気、倦怠感、発疹(紅斑)などを引き起こします。
犬バベシア症
マダニによって媒介されたバベシア原虫が赤血球を破壊。貧血や食欲低下、発熱、血色素尿(茶色~褐色の尿)、黄疸(おうだん)などを引き起こします。重篤の場合は死に至ることも。
ダニ麻痺症
吸血する際に体内に入ったマダニのだ液によって筋肉が麻痺してしまう病気です。唾液腺から強力な神経毒を出すダニの多くはアメリカやオーストラリアに生息しています。
ダニの生態と病気について
犬猫に寄生して脱毛や炎症を引き起こすダニとして、
ミミヒゼンダニ・イヌセンコウヒゼンダニ・
ニキビダニがいます。
ダニの多くは親犬から子犬へ、あるいは猫、
そのほかの感染している動物や野生動物などから移って寄生します。
ミミヒゼンダニによる主な病気と症状
ミミヒゼンダニ症(耳疥癬)
体長約0.2〜0.3mmの微小ダニ。ワンちゃんの耳の中に感染し、約3週間で卵から成虫へと成長。大量の黒い耳垢が出たり、激しいかゆみや炎症を引き起こします。
イヌセンコウヒゼンダニによる主な病気と症状
かゆみ・フケ・皮膚炎
体長約0.3mmの微小ダニ。ワンちゃんの表皮内に感染して皮膚の角質層にトンネルを掘りながら繁殖。激しいかゆみや大量のフケ、皮膚炎などを引き起こします。とくに耳介・四肢・下腹部に病変が見られます。
イヌニキビダニによる主な病気と症状
脱毛・フケ
体長約0.3mmの微小ダニ。ワンちゃんの表皮毛包内に自然寄生(無症状)しています。栄養状態が悪化したり免疫力が低下している時などに過剰増殖し、脱毛やフケを引き起こします。
図説出典:AVDAP 犬の掻痒性皮膚疾患の診断と治療に関する指針
犬糸状虫(フィラリア)の生態と病気について
犬糸状虫症(フィラリア症)は、犬糸状虫という
細長い糸状の寄生虫が、蚊を媒介として、
犬の心臓や肺動脈に寄生することによって起こる病気です。
血液の流れが悪くなり、体の中のいろいろな臓器に
障害が起きます。
犬糸状虫症(フィラリア症)の主な症状
犬糸状虫症(フィラリア症)になっても、すぐに症状が現れることはなく、数年後に現れることがほとんど。そして、症状が現れた時には、すでに重症であることが少なくないのです。
犬糸状虫症(フィラリア症)は
予防が大事
犬糸状虫症(フィラリア症)は、放置していると、最終的には死に至るとても怖い病気です。また、発症してしまうと、外科手術か副作用の強い駆虫薬での治療となり、犬に大きな負担がかかることになります。まずは感染しないよう予防として飲み薬や注射で、しっかりと対策することが大切です。
※フィラリア予防薬の投薬前には検査が必要です。
必ず獣医師の指導の下でご使用ください。
お腹の虫
(犬回虫・犬小回虫・犬鉤虫)について
犬回虫・犬小回虫・犬鉤虫などの消化管内寄生虫は、ノミなどと違い、消化管内に寄生するため発見が難しく、また、糞便中に虫卵や幼虫が排泄されるため再感染にも注意が必要です。犬回虫と犬鉤虫は、人に寄生することもあるため、予防と駆除が大切です。
犬回虫・犬小回虫・犬鉤虫による主な症状
犬回虫・犬小回虫
虫卵の経口摂取で感染。母犬から胎盤や母乳を介して子犬に感染することも。捕食した小動物や昆虫などからも感染します。
食欲不振・嘔吐・下痢
一般的には、食欲不振、嘔吐、下痢などの症状がみられます。子犬は発育不良になることも。
犬鉤虫
幼虫の経口摂取や皮膚からの侵入で感染します。母犬から胎盤や母乳を介して子犬に感染することも。
下痢・血便
一般的には、下痢、血便などの症状がみられます。子犬は重症化すると、極度の貧血状態から死に至ることも。
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