01はじめに
複数の要因からなる複雑な呼吸器病
肺炎に代表される牛呼吸器病症候群は、「Bovine(牛の)」「Respiratory(呼吸器の)」「Disease(病気)」「Complex(複合体)」の頭文字をとって「BRDC」と呼ばれます。
呼吸器病は飼育下でのストレス、飼養管理、病原体(細菌、ウイルス、マイコプラズマなど)の感染など複数の要因が絡み合い、発病に至る経過や症状が複雑な様から名付けられたと言われています。
一次病原体
肺炎に罹患する割合が多いのがこれらの病原体です。特に、マンヘミア ヘモリチカは致死に関与する割合が高くなります。
- ・ マイコプラズマ ボビスMycoplasma bovis
- ・ 牛ヘルペスウイルス1Bovine herpes virus 1 (BHV-1) 別名:IBR ウイルス
- ・ 牛RSウイルスBovine respiratory syncytial virus (RS)
- ・ 牛パラインフルエンザウイルス3型Bovine parainfluenza virus type 3 (PI3)
- ・ 牛ウイルス性下痢ウイルスBovine viral diarrhea virus (BVD)
- ・ アデノウイルス7型Bovine adenovirus 7 (Ad7)
- ・ マンヘミア ヘモリチカMannheimia haemolytica
二次~三次病原体
健康な牛では感染しても症状を示しませんが、ストレスや一次病原体により疫機能が低下すると発病につながります。
- ・ パスツレラ ムルトシダPasteurella multocida
- ・ ヒストフィルスソムニHistophilus somni
- ・ トゥルエペレラ ビオゲネスTrueperella pyogenes
02発生までの流れ
BRDCの発生
BRDCの原因となる病原体は、牛の鼻腔や扁桃などの上部気道に常在していたり、吸気などにともなって気道に侵入し、感染します。牛が健康であり、且つ免疫機能が病原体より十分に優勢であれば、生体防御機能により侵入した病原体を排除します。
しかし、飼育環境や移動によりストレスを抱えた牛や、マイコプラズマ ボビスやウイルスに感染した牛は、防御機能が低下して病原体が侵入しやすくなります。病原体が下部気道で増殖し病原性を発揮することで、呼吸器症状を引き起こします。
BRDCを引き起こすマイコプラズマと、
重症化を招くマンヘミア
マイコプラズマボビスは呼吸器病の基礎疾患的な役割を果たしており、ウイルスや細菌と複合感染することでBRDCをより重篤化させます。特に、マンヘミアヘモリチカと複合感染することにより、重症化することが知られています。
04BRDCの対策
BRDCを対策する3つのポイント
BRDCの対策にはまず環境ストレスの軽減が挙げられます。しかし、いくら飼養環境に気を遣っても、BRDCに罹患してしまうこともあります。環境ストレスの軽減にプラスして、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。
- 1. 抗病性の維持
- 有効なワクチンプログラムの実施
- 2. 早期発見・早期治療
- 病態(勢)が悪化し、抗菌剤で十分な対処が困難になる前に治療を行う
- 3. 抗菌剤の投薬コンプライアンス
- 十分な量を十分な期間投与する(少なくとも有効濃度を1~2週間維持させることが推奨されています)
投薬コンプライアンスとは
BRDCの治療にあたって、肺組織の修復期間を考慮した抗菌剤の使用が必要です。抗菌剤の投与期間が不十分なケースでは、呼吸器病の再発を招く恐れがあります。再発を軽減するために、投薬コンプライアンスを守ることが重要です。
BRDC感染後の肺組織修復時間
05BRDCの主要な病原体
BRDCの発症には様々な細菌やウイルスが関与しています。
その中でも、重要な病原体であるマイコプラズマ ボビス、マンヘミア ヘモリチカ、牛RSウイルスはBRDCの主要な病原体であり、対策が必要です。
- ・ マイコプラズマ ボビスMycoplasma bovis
- ・ マンヘミア ヘモリチカMannheimia haemolytica
- ・ 牛RSウイルスBovine respiratory syncytial virus (RS)
- ・ 牛ヘルペスウイルス1Bovine herpes virus 1 (BHV-1) 別名:IBR ウイルス
- ・ 牛パラインフルエンザウイルス3型Bovine parainfluenza virus type 3 (PI3)
- ・ 牛ウイルス性下痢ウイルスBovine viral diarrhea virus (BVD)
- ・ アデノウイルス7型Bovine adenovirus 7