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乳房炎

原因

伝染性乳房炎:

Staphylococcus aureus
Streptococcus agalactiae
Corynebacterium bovis
Mycoplasma spp.

環境性乳房炎:

CNS (Coagulase Negative Staphylococci)
Other Str. (Str.agalactiae 以外のStreptococci)
Coliformsその他、伝染性以外の細菌、真菌、藻類 など

ただし、伝染性細菌と環境性細菌の区分は研究者あるいは国によって多少異なっています。いずれにしても、ほとんどの場合、感染は搾乳時に病原体が乳頭口から侵入することでおきるので、搾乳衛生が非常に重要です。
搾乳期以外の乳房炎として、乾乳期乳房炎および未経産乳房炎がありますが、この原因菌としては伝染性および環境性の両者の菌が報告されています。

症状

  1. 甚急性※1
    全身症状: 脱水、下痢、起立不能、発熱、食欲廃絶/減退 など
    乳房の所見: 腫脹、硬結、疼痛、熱感/冷感、壊死、紫斑 など
    乳汁の所見: 凝固物、色調・粘稠性の変化 (水様, 黄色あるいは血様など)、乳量減少※2/泌乳停止、悪臭、ガス など
  2. 急 性
    全身症状: 発熱、食欲廃絶/減退 など
    乳房の所見: 腫脹、硬結、疼痛、熱感 など
    乳汁の所見: 凝固物、色調・粘稠性の変化、乳量減少 など
  3. 慢 性
    全身症状: なし
    乳房の所見: 腫脹、硬結 など
    乳汁の所見: 凝固物、色調の変化、乳量減少 など
  4. 潜在性
    全身症状: なし
    乳房の所見: なし
    乳汁の所見: 乳量減少、体細胞数、電気伝導度など検査によって認められる変化が認められる※3

※1 それぞれの病勢と症状は必ずしも一致しない。また、すべての症状がそろうとは限らない。また、同じ症状であっても病勢によって程度が異なる。
※2 明らかに認められる程度から、健康な状態と比較しての泌乳量減少までを含む。
※3 甚急性から慢性の乳房炎においても当然変化している。

治療

抗生物質の乳房内注入
抗生物質の全身投与 (皮下注射、筋肉注射、静脈注射、動脈注射)
鎮痛消炎剤投与、輸液、冷または温湿布などの対症療法
頻回搾乳 (オキシトシンの投与)
慢性あるいは潜在性乳房炎に対しては、乾乳期治療が有効なこともあります。

予防

搾乳衛生: 正しい手順で牛の泌乳生理に合わせ、オキシトシンが分泌されている間に素早く搾乳する。ライナー内の乳頭先端の真空圧を安定させ、乳頭内への逆流を最小限にする。
ディッピング: ポストディッピングは、承認されたディッピング剤を用いて、ライナーを外した直後に乳頭を浸し (スプレーではない)、液が乾燥するまで牛を寝かせない。プレディッピングは評価が一定ではない。
バルク乳検査: 定期的にバルク乳検査を実施し、伝染性乳房炎牛の摘発、環境からの汚染状況、搾乳器具の洗浄状態等をチェックする。
汚染源対策: 乳房乳頭の汚染を防ぐため乳房あるいは後躯の毛刈りをする。断尾または尾を吊る。糞尿の上に牛が寝ないように牛床などを改善する。藻類については、水回りにも注意が必要。
乾乳期治療: 現在は選択的治療より、全頭全分房への乾乳用軟膏注入が推奨されている。
飼養管理の改善: ビタミン剤、微量元素などの給与。最近は漢方薬なども応用されている。乾物摂取量を適切にし、養分要求量を充足させることが基本。小手先のトップドレスなどには限界がある。
牛舎環境の整備: 牛の居住性を向上させ (カウカンフォート)、ストレスを減らし抗病性を高める。特に敷料に何を用いるかは、快適性と衛生面において重要であり十分な検討が必要。