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趾間フレグモーネ(趾間ふらん)

趾間フレグモーネ(趾間ふらん)とは

趾間フレグモーネ(趾間ふらん)は、細菌(嫌気性菌)の感染によって起こる趾間の皮膚の炎症と壊死を特徴とする感染症であり、発熱、疼痛による中等度から重度の跛行、泌乳量の低下や空胎期間延長等の繁殖成績の低下を引き起こします。本病の日本における加療対象頭数は潜在的な例も含めると数万~10万頭におよぶと推測されており、跛行自体の経済的損失は、乳房炎による損失を上回るとする報告もあり、経営に多大な負の影響を与えていることが認められています。


跛行(背弯姿勢)

蹄冠~繋部の腫脹

腫脹による蹄の離開

繋部分の腫脹・発赤

趾間隙皮膚の亀裂・壊死・出血

(いぶり農業共済組合 佐野公洋 原図)


図1 趾間フレグモーネとは

趾間フレグモーネ(趾間ふらん)の原因

趾間フレグモーネ(趾間ふらん)の原因菌はフソバクテリウム・ネクロフォーラム (Fusobacterium necrophorum :Fn) であるとされています。湿潤、不衛生、整備されていない固い床面等、劣悪な環境下において、趾間隙皮膚の微小損傷や外傷から侵入したFnがエンドトキシンとよばれる毒素とともに白血球を殺滅する外毒素(ロイコトキシン)を産生し、壊死(細胞・組織が死に、回復しない状態)とフレグモーネ(広範な皮下組織の炎症)を引き起こすことが発症の原因であるとされています。
一方、ポルフィロモナス・アサッカロリチカ (Porphyromonas asaccharolytica、旧バクテロイデス メラニノジェニカス Bacteroides melaninogenicus) は膿瘍の形成や白血球による貪食阻止等、Fn と共力作用を有し、発病に関わっているとされています。


図2 趾間フレグモーネの原因

蹄の構造

牛の蹄は図3のように片方3つずつの骨(繋骨、冠骨、蹄骨)からなっています。したがって、爪は1本の足に2つあり、合計6つの骨から成り立ち、手根骨(あるいは肢根骨)でまとめられています。


図3 蹄の構造

趾間フレグモーネ(趾間ふらん)の治療法

趾間隙皮膚に壊死がない場合は、本病が細菌感染であることから、基本的に抗菌剤の全身投与が選択されます。しかし、選択される抗菌剤の休薬期間の長さによっては敬遠されることがあります。また、趾間隙皮膚に壊死がある場合は局所治療、例えば洗浄、余分な組織あるいは壊死した組織の除去、それら不必要な組織を分解し、清浄化する酵素を配合した軟膏剤(ブロメライン軟膏)の塗布、抗菌剤/ヨード剤/モクタールなどの塗布を行いますが、場合によっては包帯と抗菌剤全身投与を併用して行います。局所治療は牛を枠場に保定して患肢を上げて固定した後行うため、かなりの重労働であり、時間もかかる治療法です。