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豚マイコプラズマ性肺炎 (MPS)


豚マイコプラズマ性肺炎は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(マイコプラズマ)により養豚業界に与える経済的損失が非常に大きい疾病です。

  • 豚マイコプラズマ性肺炎は、世界各国で罹患率がきわめて高く、わが国においても、屠場出荷豚での抗体陽性率は80%以上となっています。

  • マイコプラズマに感染した豚では、明らかな臨床症状が認められない場合でも、発育の遅延・ 飼料効率の低下などによる経済的損失が大きくなります。

  • また、マイコプラズマに感染した豚は、生体防御機能が低下して他の細菌あるいは ウイルスに感染しやすくなります。このため、豚マイコプラズマ性肺炎は豚呼吸器複合病(PRDC)の基礎疾患としても非常に重要な疾病です。

 

豚マイコプラズマ性肺炎による経済的損失

Mhp罹患豚群
飼料効率の低下
日増体重の減少
斉一性の悪化
枝肉価格(格付け)の低下
治療薬剤費の増大

養豚生産者に対する重大な経済的損失

 

マイコプラズマ感染により、他の細菌やウイルスに感染しやすくなります。

特に若齢豚の肺の細気管支に侵入したマイコプラズマが気道表面の線毛を損傷し、 他の細菌やウイルスといった病原体が侵入しやすくなります。病原体の二次感染を受けると肺病変は重篤化し、症状が悪化します。
豚呼吸器複合病(PRDC)による被害を軽減するためには、豚マイコプラズマ性肺炎の対策が重要です。

 

原因

マイコプラズマ・ハイオニューモニエ
Mycoplasma hyopneumoniae (Mhp)

 

感染経路

  • 感染豚との接触、分泌物の飛沫感染

  • 感染豚の導入、感染している母豚から哺乳子豚への感染(垂直感染)、同居豚同士の感染(水平感染)

  • 感染した導入豚が回復してもマイコプラズマを排泄しているため、長期間感染源になると考えられています

     

    症状

    • 潜伏期間は1週間から10日間

    • 慢性的な乾燥した発咳が主な症状で、マイコプラズマ単独感染によるへい死率は低い

    • 明らかな臨床症状を伴わない発育の遅延、飼料効率の低下

    • 他の細菌やウイルスの二次感染により食欲減退、呼吸困難、発咳の増加、発熱など

       

      発症率が高くなる因子

      豚側の因子:萎縮性鼻炎 (AR) 感染による鼻粘膜損傷、豚回虫の体内移行、豚肺虫寄生
      環境因子:密飼、換気不良、気温変化 (日較差の拡大)、移動などのストレス

       

      診断

      • 臨床症状や豚群・農場などの集団を単位とした病勢

      • 屠場における肉眼的肺病変

      • 病理学的検査

      • 血液学的診断(CFテスト、ELISAなど)

      • 蛍光抗体法、酸素抗体法

      • PCR検査、ハイブリダイゼーション法

      • Mhp分離同定

       

      予防

      • 飼育密度、換気、温度や湿度の管理、オールインオールアウト飼育方式の導入など

      • ワクチン投与

       

      治療

      テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系などの抗菌剤の投与